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どんな病気か

体には、心臓から手足のほうへ流れている動脈と、手足から心臓のほうへ流れる静脈があり、このなかを血液が流れています。
心臓はポンプの役目をして、血液を動脈に送り出しています。静脈にはポンプはありませんが、代わりに力を入れて手足を動かすなどの筋肉の収縮で、静脈の流れが速くなります。
けがをした時に経験があると思いますが、傷からの出血はしばらくすると自然に止まります。このように血液が固まることを「 凝固」といいますが、血液を循環させるために、血管内部では血液は凝固しません。
しかし、手足の静脈のなかで血液が凝固することがあり、これが「深部静脈血栓症」で、できた血液のかたまり(血栓)が血管のなかを流れて肺の動脈に詰まる病気が「肺血栓塞栓症」です。
「深部静脈血栓症」と「肺血栓塞栓症」は連続した病気ですので、合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼んでいます。

原因

静脈の流れは、歩行や足の運動で起こる筋肉の収縮によって助けられています。
そのため、長時間同じ姿勢のまま下肢(足)を動かさないでいると、静脈の血液の流れが遅くなり、血栓ができます。
静脈内の血栓が血管を流れていき、肺の動脈に詰まると肺血栓塞栓症となります。
日常生活でも、小さな血栓ができて肺の動脈に詰まることがありますが、自然に溶けるので心配はいりません。
しかし、血栓が大きくなってから肺の動脈に詰まると、最悪の場合、命を落とす可能性があります。
肺血栓塞栓症は、飛行機やバスなどで長時間座っている時に起こることがよく知られています。ほかにも災害時に狭い空間での避難生活を強いられた結果として、死を招いた例も報告されています。
血栓ができる原因は、動かないことで血液の流れが遅くなるだけではなく、血液が凝固しやすい性質の人に起こりやすいことがわかっています。
また、外傷や出産・手術など出血を伴う状況にあると、体の仕組みによって血液は凝固しやすくなります。

症状

下肢の静脈に血栓ができて血管が完全に詰まってしまうと、血液が流れなくなり、血液がたまって下肢がはれます。
このような状態が長期間続くと、皮膚に 潰瘍ができることもあります。このような場合は循環器科を受診してください。
血栓ができても一部が血管の壁にくっついているだけで、血管が完全に詰まらなければ、下肢のはれなどの症状は起こりません。
このタイプの深部静脈血栓症は、血栓が何らかの原因で血管の壁からはがれて血流にのり、肺動脈に詰まって肺血栓塞栓症を起こすまで症状がないので、気づかないことが多く危険です。

肺血栓塞栓症は、肺動脈の狭い範囲に起これば症状はありません。少し範囲が広くなると、胸の痛みや苦しさが出て、時には 咳や血の痰が出たりします。
大きな血栓が肺動脈の本管に詰まると心臓停止と同じような症状が起こり、詰まった範囲が広い場合には死亡する可能性があります。
死亡するような肺血栓塞栓症は、起こってから治療することはできないので、予防を心がける必要があります。

日常生活での予防の方法

重症の肺血栓塞栓症は、起こってしまうと救命することができませんから、その原因となる深部静脈血栓症の予防を行うことが大切です。
血栓が生じる原因のひとつは血液の流れが遅くなることですので、流れを速くすることが予防につながります。
活動的な日常生活を送ることが予防になります。歩くことによって足裏の静脈のたまりを圧迫して血液を流し、筋肉を使うことでも血流をよくします。
足首の関節を力いっぱいそらしたり、背伸びのようにつま先を突っ張らせたりする運動が最適で、「パタパタ」と速く行うより「イーチ、ニーイ」とゆっくり力を入れて行うほうがより効果的です。
筋肉に力を入れた時に、筋肉内の血液が静脈に入っていくことで血液の流れを作ります。
長時間座っている時(飛行機やバスなど)や長期安静時には、こうした運動をしっかり行うのがよいでしょう。

また、弾性ストッキングを履くことも予防のひとつです。ストッキングは下肢の表面の血管を押さえて血液を流れにくくしますが、この表面の血管は「川でいえば支流」にあたるので、支流の流れをせき止めて本流の流れを増やすはたらきがあります。
また、深い部分の静脈も全体に締めつけて細くします。「川でも川幅が狭くなると流れは速くなる」のと同じように、ストッキングで圧迫することによって血管を少し細くすることで、血液の流れを速くしています。
水分補給が不足すると、血液が正常の状態より濃くなって固まりやすくなります。長時間の飛行機搭乗などでは十分な水分補給を心がけます。