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どのような病気か

肥満とは単に体重が多いことではなく、脂肪組織が過剰に蓄積した状態のことです。
しかし、体内の脂肪組織の量、すなわち体脂肪を正確に測定する方法は簡単ではないので、身長、体重に基づく指数が肥満の基準として用いられてきました。
最近、体脂肪計として市販されているものは、生体インピーダンス法といって、微弱な電気を人体に流して体脂肪量を計算するものですが、その正確性はまだ不十分です。
肥満自体は病気ではありません。体脂肪は、エネルギー補給機能、体温を維持するための断熱作用、内臓の保護作用などのよい役割ももっています。
しかし、肥満があるとさまざまな健康障害(合併症)を起こしやすいことが問題です。
肥満に基づく健康障害を合併した場合や、その危険が高い場合を「肥満症」といいます。
最近の研究から、肥満の合併症は肥満度が高いことのみで起こるのではなく、むしろ内臓脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満(上半身肥満)」で起こりやすいことがわかってきました。
●標準体重と肥満度

「標準体重」とは、その身長における最も生理的な状態にある場合の体重を意味します。
また、その体格における死亡率が最も低い体重という意味で「理想体重」という表現が用いられることもあります。
従来、日本では「(身長‐100)×0・9kg」で求めるブローカ・桂変法による標準体重の計算が用いられていましたが、これは簡便ではあるものの誤差が大きいなどの欠点がありました。
そこで日本肥満学会は、「体重(kg)÷身長(m)の二乗」で計算されるボディマス指数(BMI)が22の時に病気の合併率が最も少ないという統計成績に基づき、「身長(m)の2乗×22」によって求められる体重を、標準体重とするよう勧告しました。
標準体重に基づいて、肥満度は「(体重‐標準体重)÷標準体重×100%」で計算されます。
この式によれば、標準体重よりも少ない体重の人は肥満度がマイナスで表されます。
肥満の判定基準は、従来、肥満度20%以上、BMI換算で26・4以上ということでしたが、日本肥満学会は肥満の判定基準をBMI25以上とすることを提唱しました。肥満およびやせの判定表を表17に示します。

原因

●体重の調節メカニズム
体重は、エネルギーの摂取と消費のバランスで決定されます。エネルギーの摂取は食事によりもたらされ、エネルギーの消費は基礎代謝(体温の維持と呼吸や血液循環など生命の維持に使われているエネルギー)、食事摂取時の熱産生、生活活動や運動によるエネルギーによります。
成人では、このバランスが維持され、体重は変化しないように調節されています。
すなわち、体重が減少すると食欲が亢進してエネルギーの消費は減少し、逆に体重が増加すると食欲が低下してエネルギーの消費は増加します。
最近、こうした調節にはさまざまな因子が関わっていることがわかってきました。
そのなかで、食欲の調節には脂肪細胞から出るレプチンという蛋白質が重要な役割をしています。
レプチンは脳の 視床下部ししょうかぶというところの満腹中枢にはたらいて食欲を抑えるはたらきがあり、レプチンがなくなった動物では著しい肥満になることがわかっています。
また、胃から産生されるグレリンという蛋白質が視床下部にはたらいて、レプチンとは逆に食欲を増進させることもわかってきました。「腹ぺこ」で食欲が出るしくみはグレリンによるものだったのです。

さらに、熱産生を行う蛋白質が新たに発見され、熱産生に伴う消費エネルギーの低下が肥満の原因のひとつになることから、注目されています。

●遺伝と環境

いろいろな病気が起こる原因には、遺伝と環境の両方が関わっています。
肥満に関しても、人類の歴史のほとんどが 飢餓と寒さとの戦いであり、獲得したエネルギーを脂肪として蓄える体の仕組みが発達した結果、いわゆる 倹約遺伝子けんやくいでんし(肥満遺伝子)が保存されてきたと考えられています。
遺伝因子について世界中で研究が行われています。現在のところ、複数の遺伝子の関与が明らかになり、遺伝子を調べて肥満になりやすい体質かどうかをある程度判断できるようになってきましたが、高い確率で肥満を予測できるまでには至っていません。
一般には、肥満の原因としては環境因子のほうが重要と考えられています。
環境因子としては、、食べすぎ(過食)、食べ方の誤り、運動不足が重要です。
食べることに不自由がなく運動量が少ないという欧米型ライフスタイルが浸透するとともに、これらの環境因子は日本でも増加し、肥満が急激に増えています。

●食べすぎ
なぜ食べすぎになるのでしょうか。通常は、すでに述べたレプチンなどによって満腹中枢が刺激され、私たちは食べすぎないようになっています。
遺伝的にレプチンに異常があるために肥満が起こってくることはまれです。むしろ、肥満した人の多くではレプチンは増えていることがわかってきました。
おそらく、レプチンのはたらき、あるいは満腹中枢の機能が障害されているものと考えられています。
食べすぎを引き起こすきっかけとしては、ストレスが重要と考えられています。
強いストレス状態におかれると、手元にある食べ物を手あたり次第に食べてストレスを解消しようとする「気晴し食い症候群」といわれる状態がありますが、多くの肥満者が食べることでストレス解消を図っていることがわかっています。
さらに、食べすぎが続くと胃が大きくなって、たくさん食べないと満腹感が得られないようになることも問題です。さらに食べすぎて、肥満が進行する原因になります。

●食べ方の誤り
意外にも、肥満者のかなりの人は食べすぎではないことがわかっています。
こうした場合、食べる量よりも食べ方が問題です。食事回数と肥満との関係をみてみると、食事回数が少ないほど太りやすいのです。
すなわち、朝食を抜いて夜に多く食べるなどの「かため食い」は、食べた栄養が吸収されやすく、過剰エネルギーをもたらすことで肥満につながりやすいのです。食事の回数が減ることで、食事摂取時の熱産生が減ることも原因と考えられています。
1日の摂取量の半分以上を夜に食べる「夜食症候群」も太りやすい食べ方です。
夜は消化管の機能が活発になり、食べた物が貯蔵エネルギーになりやすいと考えられます。
また、「早食い」もよくありません。満腹感を感じにくく不必要に食べすぎることになります。

●運動不足
運動不足では、消費エネルギーが低下してエネルギーが体のなかにたまりやすくなりますが、それよりもエネルギーを体のなかにためやすいという代謝状態をつくるほうが重要です。
すなわち、運動不足は、血糖値を下げるはたらきをもつインスリンというホルモンのはたらきを低下させて、血糖を正常に保つのに必要なインスリン量を増やしてしまいます。この時のインスリンは、血糖値を下げる力は弱まっているのに、脂肪をつくる作用は弱まっていないために、体のなかで余分なエネルギーを脂肪に変えることを促進することになります。
さらに運動不足は、筋肉量を減らし、安静にしていても体温を維持し生命活動を保つために使われる基礎代謝で使われるエネルギーを少なくしてしまいます。
また、脂肪合成酵素のはたらきも高まるので、脂肪が体のなかでつくられやすくなります。